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Our 6th album is released!

"mishmash 6", on August 22nd 2019!
1st single "Test Flight"
2nd single "忘れないで(piano ver.)"
https://open.spotify.com/intl-ja/album/4OASXm9JGGuajzlWSce2A0
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Liner Notes

1)Test Flight                             2:07    
2)Sun In My Heart                   4:07    
3)Dear My Son                         5:35    
4)Rooting Love                        3:53    
5)おはよう                              3:43    
6)坂道パラシュート              4:24    
7)想い出のphotograph            4:06    
8)綿雪                                      5:01
9)忘れないで Acoustic ver.    5:13
10)  Epi-pharmonics                      7:31 

1) Test Flight(作曲:荻野 優 編曲:桐林 慶)
インストルメンタルバンドとして1984年に発足したmishmashが、いつしか歌ものポップス路線に変わり、35年という年月を経て新譜をリリースすることとなった今回、原点回帰・温故知新の思いで完成直前に急遽作ったのがこの曲。ファーストアルバム収録の「Dogstick」(いろは順にひらがなをシャウトしていくシュールなディスコナンバー)をイメージしながら荻野氏(現在は埼玉在住、私の執拗なプッシュでDAW=Digital Audio Workstationを導入)が流し弾きした短いシーケンスを広島へ送信してもらい、その音声データを短冊切りして再構築した結果、カオスでファンキー、mishmash初期を思わせる小作に仕上がりました。昔との大きな違いは、カセットテープのオーバーダビング手技と違い、編集過程で全くノイズが増えず、Protools然とした透明感が保てるところでしょうか。

終始、パンチの効いたノコギリ波の和音にオートアルペジエータが奏でるランダムな16ビートフレーズが乗る構成ですが、途中で6弦ベースのアーミングがスパイスになっています。同じく広島出身のPerfumeのプロデュースをされているナカタヤスタカ氏をリスペクトしつつのアレンジです。

2) Sun In My Heart(作詞:廣川恒志 作・編曲:桐林 慶)
当時、境港海陸運送の社長だった義理の父から、会社のイメージアップ戦略として新しいテレビCMを制作するので作曲して欲しいという依頼を受けて出来たのがこの曲です。前作が「頑張れ山陰!頑張れ境港!」を連呼する体育会系CMだったため、作詞の廣川氏と話し合って「山陰」を”Sun in”と語呂合わせするなど、明るく暖かい印象の曲に仕上げよう、波の揺らぎをイメージしよう、ということでこのような曲調になりました。山陰地方限定でオンエアされたので、リアルタイムに放送を見ることはありませんでしたが、現地の友人がCMのテロップに私の名前が出てたよ、と驚いて教えてくれたのを覚えています。(動画ご参照ください↓)この時、CM制作会社へ持ち込んだ絵コンテがきっかけで、後に廣川氏がそこへ就職し、その後TVディレクターになっていくきっかけとなった曲でもあります。

当初はCM用に30秒のサビだけを作ったのですが、会社の業務紹介DVDのためフルソングバージョンが必要となり、Aメロ、Bメロが後付けされ、この曲が完成しました。メロトロンのフルートをストロベリーフィールズフォーエバーのイメージでサビのバッキングに挿入しています。頂いたギャラで小学校へ上がったばかりの娘に学習机を買ったのが昨日のことのようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



3) Dear My Son(作詞:廣川恒志 作・編曲:桐林 慶)
2000年6月に生まれた息子のために書いた曲です。19年の歳月を要してしまったのは、医師としての本業が忙しかったということ以外に、アレンジや録音作業よりも、歌詞を完成形に漕ぎ着けるまで時間がかかったというのが実情でした。作詞担当の廣川氏にも息子さんが生まれ、それぞれの息子への思いが交錯し(息子を「お前」と呼ぶか「君」と呼ぶかから始まって;笑)、ここはこうして欲しい、いやそれは譲れない、の押し問答。頑固オヤジ二人の協議というのはヤヤコしいもので、最終的にはそれぞれの息子へ贈る歌として二種類の歌詞が出来上がり、廣川氏自身が息子さんのために歌えるようキーを下げたオケを別個に作るという話で落ち着きました。

ピアノはスタインウェイのコンサートグランドをサンプリングしたIvoryという音源で鳴らしています。途中のギターソロは、ボーカルのハイトーンからバトンタッチするイメージでJames Tyler Studio EliteをFractal Audio Axe-Fx IIに繋いで録っています。終盤のドラムは、スネアとタンバリン、オープンハイハットを重ねるロジャー・テイラー風(あまり感じは出てませんが)。バックコーラスやメロディーのハモりパートを何種類か試作しましたが、一対一で父が息子に向き合って語るイメージが崩れるため、すべてボツになりました。

4) Rooting Love (作詞:廣川恒志 作・編曲:桐林 慶)
高校~大学時代にmishmashと並行して活動していた8mm映画制作。当時「Rootman」という変身ヒーローものに取り組んでいて、そのサウンドトラック用に作ったのがこの曲。mishmashとしては珍しくサビから入るベタな構成ですが、Aメロの冒頭部分はガンダム世代へのオマージュであることにお気付きでしょうか。ドラム、ギター、ベースというシンプルなライヴバンドのトラック制作を意識しましたが、転調に次ぐ転調で、実際のところ弾き語るには意外にハードな楽曲になっています。通常ロックでは使われないGmaj7+11をキメのフレーズ最後に置くなど、随所に和音マニアのこだわりを散りばめています。

通常レコーディグ時は直前にベースの弦を張り替えるのですが、スラップベースの低音でダルダル感を出すため、あえて使い古した弦を使用しています。全編バッキングギターは'60ストラトキャスターですが、終奏部の「悪を切り裂くイメージ」のソロはJames Tylerを使っています。スラブローズ指板の野太いバイト感満載のストラトをバックに、モダンでスウィートなタイラーブーストトーンが切り込んでくるあたりをご堪能いただければ幸いです。(ギターマニア向け過ぎる解説)

5) おはよう(作詞:廣川恒志 作・編曲:桐林 慶)
森と風、冷え切った湖、夜明けの澄んだ空気の中で目覚めたときのイメージで。曲の構成上「サビらしいサビ」無しでどこまでキャッチーな曲を作れるか、私なりに音楽的な挑戦をしてみたんですが、廣川氏の文学的な歌詞と相俟って、mishmashの曲としてはかつてない独特な雰囲気に仕上がっています。氏が書きためた詩のファイルを最近になって私が抽斗から見つけ出し、読んだ瞬間にインスパイアされてできた、mishmashには珍しく歌詞先行の曲でもあります。日本画家をされている今の奥様と出会った頃に書いたとのことですが、冒頭のツンデレな語りかけから始まり、流れるように言葉を紡いで詩の世界観へ読み手を引き込む「廣川文学」とでも言うべき筆力に影響され、割と自然このハーモニーの流れが出来上がりました。

メインギターはTaylor 314ceで、RODE NT-1を立てて録音しています。途中から入るガットギターのアルペジオは、亡き父が大学時代にバイト(夜間のハードな土木工事)をして買った1959年製のクラッシックギター(YAMAHA Dynamic Guitar NO.2)で。完成した時は、ギター好きだった父との共演をある意味で果たせたような気持ちになりました。途中のギターソロは、黒瀬の音楽工房「串小屋」にあるスタジオで、'60ストラトにKlon Centaurを繋いだフェンダーツイードアンプから。程よい歪みと減衰感がシャレオツではないかと自負しております。

6) 坂道パラシュート(作詞:東 良也 作・編曲:桐林 慶)
John Mayerの名曲”Stop This Train”が描く「終わりに向かって走る人生の儚さを前向きに捉える世界」が好き過ぎて、同じフィンガーストロークの曲を作ってしまいました。中学高校、青春時代を男子校で過ごした私ですが、この歌の中では男女共学に置き換えた設定で、今の自分を形作ってくれた友人(あえて異性)との切ない想い出を回顧する内容の歌詞となっています。「あの頃の僕は君の目をまっすぐ見つめ返すことができないほど、弱くて自信が無かった。グラウンドから正門へ向かう桜並木の坂を下りながら見た君の笑顔に、何度も救われた。」というコンセプト。全て妄想ですが。(笑)持ち込んだプロットをうまく歌詞の形に整えてくれた作詞担当の東(あずま)氏には、ただただ感謝。否応無しの重力を受けて自転車で坂を下る時も、春の風は半袖から入ってYシャツの背中をパラシュートのように膨らませて僕らを引き留める、桜の花びらを舞い散らせながら。そんな映像に、若かった日々を重ねてみました。「ふと僕が笑った今、どこかで君が泣いてたらそれはフェアじゃ無い。」という思いは持って居たいです。何かができるという訳じゃなくとも。
冒頭の乾いたAMラジオ風ギターリフから鮮明なステレオサウンドへ展開させることで、青春の原風景がリアリティーをもって心に蘇るさまを表しています。リズム隊は薄いキックとスネアブラシのみ。くぐもったピアノと少しのコーラスをスパイスに。千田町のスタジオ5150で片山さんに古いTokaiのエレキベースをお借りして(レンタル料金は250円/時間。これが何とも程よく草臥れたフラットワウンド弦のサウンド!)レコーディングしました。荻野氏によるSaxソロパートは、東京出張の際に神田のスタジオBumblebeeへ録音機材を持ち込んでナベサダ風に。

7) 想い出のフォトグラフ(作詞:清水 豊・廣川恒志 作・編曲:荻野 優)
高校時代、CASIOPEAに傾倒するあまりインストルメンタル曲ばかり作っていたmishmash。休憩時間になると音楽室に忍び込んでグランドピアノをおもちゃにしていた我々でしたが、そんなある日、荻野氏が「歌モノの新曲ができた」と聴かせてくれたのがこの曲でした。Am7 - D7add9を往復するシンプルながらもクールな前奏にメンバー皆がエキサイトしたのを覚えています。当初のサビの歌詞は「♪おとこー、おんなー♪」と無意味に破天荒でしたが、後に水泳部(だった?)の清水くんが「夏の終わりの別れ」をイメージして「♪Smile on me, say Good-bye ♪」というお洒落な歌詞を書いてくれて(後に廣川氏が加筆)、切なくも清々しいポップス曲が誕生した訳です。当時、RCC中国放送で「あっちゃんの青春ING」というアマチュアソングをかけてくれる深夜番組があり、そこへカセットテープで投稿してオンエアされたことは、mishmashにとって一大イベントとなりました。未使用の古い年賀状をクラスで集めて組織票のリクエストを送り、同番組のチャートで一位を獲得したこともまた「青春の1ページ」です。その後、mishmashとして様々なバージョン(ディスコロック、ドラムンベース等)でこの曲を再録音してきましたが、それぞれがその時々に聴いた音楽の影響を受けた音像記録となっています。
今回のテイクは、ボサノバ調。Taylor NS72ceでテンションコードを鳴らし、それにパーカッションとしてカホンを重ねています。カホンのモタリ、ツッコミ、叩きムラが何ともアナログ(特に2バース目の頭)で我ながら結構気に入ってます。ベースはYAMAHA BBX-24を指弾きしています。

8) 綿雪(作詞:東 良也 作・編曲:桐林 慶)
リリース時期を全く考えていなかった結果、真冬のラブソングを残暑厳しい時期にリリースすることになりました。(笑)コンセプトとしては「坂道パラシュート」の冬バージョンで、すれ違い、別れてしまった恋人が残していったものが「今の自分」を形作ってくれていることにふと気付いて、切なく立ち尽くす、といった具合でしょうか。独特な感性を持つ東京在住のIT系エンジニア東氏の歌詞(平坦ながら丁寧に抽出された言葉)と相俟って、寒空の下の青春群像、その心象風景がきっちり描けてはいないでしょうか?
これまでギターの変則チューニングは避けていたのですが、この曲のメインギターは6弦をCまで落としたTaylor 314ceです。同じ演奏を2回録音して左右に振り、音の厚みとコーラス感を出しています。変わり種と言えば間奏のギターでしょうか。クラッシックギター(YAMAHA Dynamic Guitar No.2)とエレキギター(’60ストラトキャスター)で、別々のソロを左右に振って同時に鳴らしてしまうという斬新かつ無謀な、何かの間違いじゃないかという試み。音楽作りをアマチュアの視点から謳歌しているとしか言えませんが、これはこれで成立しているような感じがしています。エレキギターソロにはエレハモのエンベロープフィルター「Q-TRON+」を使っていますが、録音直後になぜか壊れて突然音が出なくなってしまいました。やはり無謀な使い方だったのでしょうか。

9) 忘れないで(作詞:廣川恒志 作・編曲:桐林 慶)
1992年、ヤマハ音楽振興会が開催したコンテスト「ミュージッククエスト」にデモテープを送り、中四国代表曲に選ばれた曲です。後にaiko、椎名林檎などを輩出したこのコンテスト、ポプコン時代には無かった「アマチュアミュージシャンをデビューまで音楽的側面から支援する」スタイルをとっていました。この曲も、アレンジャーの高橋一之氏(現:エリザベト音大講師)、ディレクターのボンバー石井氏など、広島スタッフの全面的サポートを受けて紙屋町伊予ぎんビルにあるスタジオに丸一日篭ってプロの機材で録り直し、東京大会に備えて「ナミキジャンクション」で先行ライブを開催するなど、至れり尽くせりの待遇でした。往復新幹線代・ホテル代全額ヤマハ持ちで臨んだ「渋谷エピキュロス」での東京本戦。その時の面接でずらり並んだプロデューサー陣から「プロになる意思は?」と聞かれ、「ありません。」と思わず正直に答えてしまい、同行したボンバーさんに後でケツバットを食らいましたが、それでもキングとコロンビアから声かけがあったと後で聞かされ、少しだけ心が揺らいだのを覚えています。医学部卒業まであと一年半という時期の、ほろ苦い出来事でした。
今回のアコースティックバージョンでは、スチール弦とナイロン弦のブレンド感を味わえればと思ってTaylor 314ceとNS 72ceを左右に振っています。mishmashのアルバムには一曲だけフレットレスギターを入れるという鉄則があり(笑)、今回はこの曲の間奏で使っています。学生時代、友人から貰った赤いストラトにハムバッカーを乗せてアイボリーに塗り替え、ペンチでフレットを強引に引き抜いて木パテで埋めた自家製フレットレスギター、三十余年を経てなお活躍しています。嗚呼、楽器は一生の友、むべなるかな。


10) Epi-pharmonics(作・編曲:mishmash)

曲名は、Epiphany (突然のひらめき)とHarmonics(弦の高調波)を組み合わせた造語です。20年以上前から温めていたギターリフのアイデアで、12フレットと7フレットで解放弦のハーモニクスをアルペジオで鳴らした時の響きを前面に押し出しています。Em7とBm7を往復するだけで一つの曲が成立してしまうのは、ギターのハーモニクスが持つ独特の存在感によるものではないかと思っています。それに便乗してアルトサックス、ギター、ベースが各人のリスペクトするミュージシャンを心に描きながら順繰りでインプロビゼーションに耽けるにしても、七分間はちょっと長すぎました。(笑)しかし、久しぶりにリリースする新譜ということで、結成当初の「mishmash」らしさを持った曲をアルバムの最初と最後に配置することで、「ごちゃまぜ」を意味するバンド名を体現できたかなと思ったりもします。

生ベースに音を差し替える段階でLow Bが出ないことに気づき、伴奏のベース音はオクターバーを使っています。ギターはFernandesサスティナーの2Modeドライバーユニットを搭載したMusicman Luke(Red Sparkle)です。(チューンアップで、LUKE藤原さんには本当にお世話になりました。)トーンノブのPush/Pushスイッチでノーマル/ハーモニクスを選択できる特別仕様ですが、なかなかの暴れ馬で制御は未だに困難。とは言え、奇天烈なソロを弾くには持って来いの一本で、ギターであるにも関わらず音が減衰しないため、通常のギターではあり得ないフレーズを勝手に歌い始めてくれます。今回もギターソロの最後にEm7に対してmajor3度がハマった瞬間「あ、何か降りてきた」みたいな感覚に陥りました。

以上、全10曲いかがでしたでしょうか?

「締め切りは創作の母」と言いますが、今回もProtoolsという「編集の底なし沼」に作品群を放り込み、日常の喧騒の中で2019/8/22 =「mishmash35周年記念Live」というリリースの締め切り日を設定して、強引なピリオドを打ち込む格好で仕上げたアルバムとなりました。逆にそれが無ければ何年後になっていたか分かりません(笑)。毎度のことながらセンスや知識、技術の限界も身に沁みましたし、作品の随所に色々な後悔は残って居ますが、それはそれで良かったのかなとようやく思えるようになった今日この頃です。これが遺作となるか、次作があるか、私自身が一人のmishmashファンとして期待を込めて傍観しているような有様ですが、また形にしたいと思える曲が生まれてくれば、万難を排してでも創ってしまうんだろうな、と思ってもおります。「まだバンドやってるの?」と同窓会で言われながら。その時まで皆さま、ごきげんよう。(文責:Kei Kiribayashi)

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